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秋田地方裁判所 昭和34年(むの1)259号 判決 1959年10月28日

被疑者 渡部次郎 外一名

決  定

(被疑者・弁護人の氏名略)

右弁護人両名の申請にかかる接見の日と場所指定についての処分変更請求事件につき、当裁判所は次の通り決定する。

主文

検察官宮城賢一が昭和三十四年十月二十九日と指定した接見の日を同年十月二十八日及び同月二十九日と変更する。

理由

所論は、「弁護人両名が、検察官宮城賢一に対し被疑者等との接見を申し入れたところ、同検察官は昭和三十四年十月二十二日、その接見の日を昭和三十四年十月二十九日と指定する旨の処分をした。しかしながら、弁護人両名が昭和三十四年十月二十日被疑者等と接見した以後、勾留期間満了日である同月二十九日まで接見することのできないような検察官の前記指定処分は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するものであるから、右接見の日を本件裁判のあつた日と変更する旨の決定を求める」というにある。

よつて按ずるに、検察官提出の一件記録等に徴すれば被疑者両名は昭和三十四年十月十日裁判官の発布した勾留状により秋田警察署に勾留され同月十九日、右勾留期間を同月二十九日まで延長されたところ、弁護人は検察官の指定により同月十六日及び同月二十日の二回に亘り被疑者等と接見しておること及び検察官は同月二十二日弁護人等に対し接見の日を同月二十九日と指定したことが認められる。ところで検察官、検察事務官又は司法警察職員は被疑者の防禦権を不当に制限しない限り捜査のため必要があるときは公訴の提起前弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(以下単に弁護人等と称する)と身体の拘束を受けている被疑者との接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができることは刑事訴訟法第三十九条第三項の明定するところであるが、被疑者等に対し前記二回の接見を指定し、その後勾留期間満了の前日まで弁護人と被疑者との接見を許容しない検察官の本件措置は、弁護人等が立会人なくして被告人又は被疑者と接見し、授受することができることを規定した同法第三十九条第一項、及び被告人と弁護人以外の者との接見、授受の自由を保証した同法第八十条、第八十一条の趣旨と照らし併せて考察するとき、弁護人に対し勾留期間満了の当日接見を指定し被疑者等に対する防禦の準備をする権利を同日一日に限定するものであつて、右権利を不当に制限する措置と断ぜざるを得ない。よつて刑事訴訟法第四百三十条、第四百三十二条、第四百二十六条第二項により主文のとおり判決する。

(裁判官 三浦克已 片桐英才 高木典雄)

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